ドコモの通信基盤が大きく進化!モバイルコアネットワークの完全仮想化とは?
NTTドコモは、2026年3月末までにモバイルコアネットワークの完全仮想化を完了したと発表しました。これは、9,000万を超えるユーザーが利用するモバイル音声サービスやデータ通信サービスの基盤が大きく進化を遂げたことを意味します。
コアネットワークと仮想化をわかりやすく解説
「モバイルコアネットワーク」や「仮想化」といった専門用語を聞き慣れない方もいるかもしれません。これらの技術が私たちのスマートフォン利用にどう影響するのか、まずは簡単に解説します。
モバイルコアネットワークとは?
普段私たちがスマートフォンで通話したり、インターネットを使ったりする際、データはどこを通っているのでしょうか?モバイルコアネットワークは、例えるなら、データ通信の「交通整理を行う中枢神経」のようなものです。ユーザー認証から、データ通信の経路制御、課金機能まで、モバイル通信のほとんどすべての重要な処理を担っています。
仮想化とは?
従来のコアネットワークは、機能ごとに専用のハードウェア機器を使って構築されていました。しかし「仮想化」とは、こうした専用の物理的な機器に頼らず、汎用的なコンピューター(汎用サーバ)上でソフトウェアとしてさまざまな機能を動かす技術です。
例えば、一台の高性能なパソコンで複数の異なるプログラムを同時に動かすようなイメージです。これにより、物理的な制約を受けにくく、より柔軟で効率的なシステム構築が可能になります。
完全仮想化の達成
今回の「完全仮想化」は、コアネットワークを構成する主要な機能(5GC、EPC、IMSなど)の全てを、汎用サーバ上でソフトウェアとして動作する形へ移行したことを指します。これにより、ネットワーク全体の制御や運用がより柔軟に行えるようになりました。
長年の研究と国際標準化への貢献
ドコモは、この完全仮想化の実現に向けて、2005年からネットワーク仮想化に関する基礎研究に着手しました。その後、欧州電気通信標準化機構(ETSI)や移動通信システムの国際標準化プロジェクト(3GPP)といった国際標準化団体で技術の標準化を推進し、2014年には実証実験に成功しています。
2014年10月14日の報道発表では、世界主要ベンダー6社と「ネットワーク仮想化技術」の実用化に向けた実証実験に成功したことが伝えられました。
世界主要ベンダー6社と「ネットワーク仮想化技術」の実用化に向けた実証実験に成功
さらに、2016年3月には世界に先駆けて、複数のベンダーのEPCソフトウェアを統合仮想化基盤上で動作させる商用運用を開始しました。
世界初、複数ベンダーのEPCソフトウェアを動作可能なネットワーク仮想化技術を開発
このように、ドコモは特定のハードウェアに依存しないネットワーク構築を、通信業界全体の技術進展と歩調を合わせながら段階的に進めてきたのです。
完全仮想化で得られる3つの大きなメリット
コアネットワークの完全仮想化は、私たちのモバイル通信環境にどのような良い変化をもたらすのでしょうか?主なメリットは以下の3点です。
1. 通信の信頼性向上

万が一、ネットワーク設備に障害が発生した場合でも、「オートヒーリング」という機能が活躍します。これは、ソフトウェアやハードウェアの異常をシステムが自動的に検知し、別の健全な仮想リソース上で機能をすぐに再起動・再構成する技術です。これにより、障害によって通信が途切れる期間が短縮され、より安定した通信サービスが提供されるようになります。スマホの接続が途切れる心配が減ることは、私たち利用者にとって大きな安心材料です。
2. 設備容量拡大の迅速性向上
新しいサービスが開始されたり、災害時などで急激にトラフィック(通信量)が増加したりする際、ネットワークの設備容量を迅速に増やす必要があります。完全仮想化されたネットワークでは、汎用的なハードウェアのリソースを複数のシステムで共有し、空いているリソースを柔軟に活用できます。
これにより、必要な設備容量を確保するまでの期間が短縮され、いつでも「つながりやすい」環境が維持されます。さらに、自然災害などに対して、ネットワーク設備の容量を自動的に拡張し、つながりやすさの向上を実現する「オートスケーリング」機能も可能になります。
3. 運用効率と環境負荷の改善
汎用サーバの集約利用や最新のハードウェアの導入により、設備を設置するスペースの削減や消費電力の削減が可能になります。これは、ネットワークの運用効率を向上させるだけでなく、地球環境への負荷を低減することにも貢献します。
パートナー企業との連携で実現
この大規模な完全仮想化は、ドコモ一社だけでなく、多くのパートナー企業との協力によって実現しました。シスコシステムズ合同会社、デル・テクノロジーズ株式会社、日本電気株式会社、エリクソン・ジャパン株式会社といった企業が、国際標準化活動の推進や仮想化技術の適用範囲拡大において貢献しています。
今後の展開
ドコモは今後も、設備構築の自動化や運用の省力化、設備コストの低減を目指し、最新のクラウド技術を活用していきます。オンプレミス(自社設備)だけでなく、パブリッククラウドも活用したハイブリッド構成のコアネットワーク構築を推進する予定です。
2026年3月2日には、国内で初めてAWS上に構築した5Gコアの商用サービス展開を開始するとともに、世界で初めてAIを用いたコアネットワークの自動構築に成功したと発表されています。
国内で初めてAWS上に構築した5Gコアの商用サービス展開を開始するとともに、世界で初めてのAIを用いたコアネットワークの自動構築に成功
これにより、モバイル通信サービスの基盤であるネットワークはさらに高度化・最適化され、私たちはこれまで以上に安心して、そして便利に通信サービスを利用できるようになることでしょう。