2026.04.25 業界最新情報

手のひらサイズの頼れる相棒!組み込み型ボックスPCハードウェア市場が2035年までに99億ドル規模へ成長予測

手のひらサイズの頼れる相棒!組み込み型ボックスPCハードウェア市場が2035年までに99億ドル規模へ成長予測

私たちの身の回りには、目には見えないけれど、社会のさまざまな場所で活躍する小さなコンピュータがたくさんあります。工場で機械を制御したり、交通システムを動かしたり、お店のデジタルサイネージを管理したり、医療機器の頭脳になったり……。これらが「組み込み型ボックスPC」と呼ばれる存在です。一般的なパソコンとは異なり、特定の機能や用途に特化し、過酷な環境でも安定して動作するように設計されています。

この組み込み型ボックスPCハードウェア市場が、今後大きく成長すると予測されています。SDKI Analyticsが実施した最新の調査では、市場規模が2025年に約42億米ドルを記録し、2035年までに約99億米ドルに達する見込みであることが明らかになりました。さらに、この市場は予測期間中に年平均成長率(CAGR)約8.9%で成長を続けるとされています。

組み込み型ボックスPCハードウェア市場の予測

成長の鍵を握る「産業用IoT(IIoT)」

この市場成長の大きな原動力となっているのが、「産業用IoT(IIoT)」の普及です。IIoTとは、工場や産業分野でIoT(モノのインターネット)技術を応用したもので、センサーや機器がインターネットでつながり、データの収集・分析を通じて生産性の向上や効率化を図ります。組み込み型ボックスPCは、これらの膨大なデータを現場で処理するための「司令塔」のような役割を担っており、その需要は今後ますます高まるでしょう。

実際、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、IoT技術関連産業の市場規模が2025年には1兆米ドルを突破すると推計しています。また、2023年時点で世界におけるネットワーク接続デバイスの総数は290億台を超え、そのうち147億台はM2M(機器間通信、つまり機械同士が直接データをやり取りする技術)による接続が占めていることからも、組み込み型ボックスPCの重要性がうかがえます。

市場が直面する課題と最新の取り組み

一方で、この市場には課題も存在します。サプライチェーンの不安定化や部品不足は、生産スケジュールや価格に大きな影響を与え、特に中小規模のメーカーにとっては調達の困難さを増しています。こうした状況は、製品の発売延期や在庫の増加、さらにはコストの最終消費者への転嫁といった対応を企業に迫ることもあります。

しかし、技術革新は止まりません。たとえば、2026年1月にはAMDがAI機能の拡張やゲーミング性能、ビジネス利用に即した機能を強化した最新世代のプロセッサーを発表し、組み込み型PCの性能向上に貢献しています。また、2025年4月にはContec Co., Ltd.が、BOXコンピュータ「BX-M310シリーズ」にWindows 11ベースの組み込みOS「Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024」を搭載したモデルを追加し、より高度なシステムに対応可能になりました。これらの動きは、組み込み型ボックスPCが常に進化し続けていることを示しています。

ファンレスPCが市場を牽引

組み込み型ボックスPCは、その冷却方式によって「ファンレスボックスPC」と「ファン冷却式ボックス型PC」に分けられます。このうち、ファンレスボックスPCが市場で優勢な地位を維持すると予測されています。ファンレスPCは、その名の通り冷却ファンを持たないため、塵や埃が内部に入りにくく、騒音も発生しません。さらに、可動部品が少ないため故障しにくく、メンテナンスの手間が省けるというメリットがあります。高い信頼性、少ないメンテナンス、そしてエネルギー効率の良さが、幅広い分野での採用を後押ししているのです。

液冷式コールドプレートを用いることで、空冷システムと比較してCPUクロック性能を41%向上させることが可能であるという研究報告もあり、冷却技術の進化も高性能化に寄与しています。

アジア太平洋地域が成長の中心に

地域別に見ると、アジア太平洋地域が予測期間において34%という最大の市場シェアを獲得し、同時に9.2%という最も高い年平均成長率(CAGR)を記録する見込みです。この地域の急速な産業オートメーション化と、ハードウェア主導によるデジタル化の進展が、この優位性を確固たるものにしています。例えば、東南アジアのデータセンター産業は、2030年までに約120億米ドルの収益を生み出すと推定されており、組み込み型ボックスPCの需要をさらに高めるでしょう。

日本も、高度な製造エコシステムにおける卓越した能力を背景に、組み込み型ボックスPCハードウェア市場の拡大を牽引しています。経済複雑性観測所(OEC)のデータによれば、日本は2024年において、269百万米ドル相当の出荷額を記録し、産業用ロボットの世界第2位の輸出国となりました。こうした産業基盤が、組み込み型ボックスPCの需要を支えています。

組み込み型ボックスPCハードウェア市場の主要なプレーヤー

世界の組み込み型ボックスPCハードウェア市場で著名なプレーヤーには、以下のような企業があります。

  • Advantech

  • AAEON Technology

  • OnLogic

  • Kontron

  • ARBOR Technology

また、日本市場のトッププレーヤーとしては、以下が挙げられます。

  • Renesas Electronics

  • CONTEC

  • IEI Integration Japan

  • PFU Limited (Fujitsu Group)

  • Hitachi Industrial Equipment Systems

組み込み型ボックスPCが拓く未来

組み込み型ボックスPCは、私たちの生活や産業の「縁の下の力持ち」として、今後も進化を続けるでしょう。AI機能の強化や高耐久性、省エネ性能の向上により、さらに多様な分野での活用が期待されます。スマートシティ、自動運転、次世代医療機器など、未来を形作る様々なシステムにおいて、この小さなパワフルなPCが重要な役割を担うことでしょう。これまで組み込み型PCに馴染みがなかった方も、これを機にその可能性に注目してみてはいかがでしょうか。

関連情報

SDKI Analyticsのレポートに関する詳細情報は、以下のリンクから入手できます。

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