2026.04.26 業界最新情報

産業の進化を支える「組み込みパネルコンピュータ」市場、2035年までに34億ドル規模へ成長予測

2035年には34億ドル規模へ、市場は着実に成長中

SDKI Analyticsの最新調査によると、組み込みパネルコンピュータ市場は2025年に約18.5億米ドルを記録し、2035年までには約34億米ドルに達すると予測されています。この期間中の年平均成長率(CAGR:年平均成長率)は約6.2%と見込まれており、今後も安定した成長が期待されます。

成長を牽引する二つの大きな波:データセンターとエッジコンピューティング

この市場成長の背景には、主に二つの大きなトレンドがあります。

データセンターの拡大と現場での監視ニーズ

一つは、インターネットやクラウドサービスの普及に伴い、データセンターの建設・改修が急速に進んでいることです。例えば、米国エネルギー省の報告では、米国内のデータセンターの電力消費量が2023年の176TWhから、2028年には325~580TWhへと大幅に増加する可能性があると指摘されています。

データセンターでは、電力供給や冷却システムなど、多くの設備が稼働しており、これらを安定して運用するためには、現場でのきめ細やかな監視と制御が不可欠です。ここで「組み込みパネルコンピュータ」が、堅牢で常時稼働可能なタッチパネルとして活躍します。これにより、運用担当者は現場で直接、設備の状況を確認し、迅速に対応できるようになるのです。

エッジコンピューティングの普及

もう一つは、「エッジコンピューティング」の進展です。エッジコンピューティングとは、データの発生源に近い場所で処理を行う技術のことで、これによりリアルタイムでのデータ分析や迅速な意思決定が可能になります。

ヨーロッパ委員会の『State of the Digital Decade 2025』報告書では、エッジノードの展開が明確に言及されており、分散型キャビネットやマイクロデータセンターの設置が今後さらに拡大すると予想されます。こうした環境では、従来のデスクトップ型PCよりも、省スペースで堅牢性に優れた組み込みパネルコンピュータが選ばれる傾向が強まっています。

課題:一次アルミニウムの供給減少が成長の足かせに?

一方で、市場の成長を阻害する可能性のある課題も存在します。それは、組み込みパネルコンピュータの製造に必要な「一次アルミニウム」の生産減少です。米国地質調査所の報告によると、2024年の米国の一次アルミニウム生産量は前年比で減少しており、世界的なエネルギーコストの高騰や新規製錬所への投資不足が、供給の柔軟性を低下させています。この供給ギャップが、今後の製品供給に影響を与える可能性も指摘されています。

進化を続ける組み込みパネルコンピュータ:最新動向

市場では、製品の進化も止まりません。

  • 2026年3月、CONTECは第13世代Intelプロセッサを搭載し、スマートファクトリーやエッジコンピューティング環境に最適化された産業用パネルコンピュータ「PT-M12SA-46×0-G」および「PT-M15SA-46×0-G」を発表しました。これにより、製造現場でのリアルタイム制御やIoT連携がさらに高度になります。

  • 2026年3月1日、NEXCOMはAI機能を統合したファンレスAIエッジパネルPCの新シリーズ「APPC C21-01」を発表しました。これは、産業用オートメーションとエッジAIを融合させ、スマートファクトリーの運用を強力に支援するものです。AIの活用により、より賢く、効率的なシステムが実現されつつあります。

市場を牽引する「パネルマウント型PC」

組み込みパネルコンピュータ市場は、設置タイプ別に「パネルマウント型PC」「ラックマウント型PC」「ポータブルPC」に分けられます。この中で、パネルマウント型PCは予測期間を通じて46%の市場シェアを維持すると見込まれています。

パネルマウント型PCは、製造現場などで機器の散乱や落下といったリスクを避けるため、設備に固定され、筐体と一体化して設置されることが一般的です。信頼性、安全性、そして長期的な運用性を重視する産業環境において、こうした堅牢な一体型インターフェースが標準的に採用されています。

地域別に見る市場の動向:北米と日本の活発な動き

北米市場:インフラ拡大が需要を後押し

北米市場は、組み込みパネルコンピュータの収益シェアで第2位の地位を確保すると予測されています。データセンターをはじめとするエネルギー集約型インフラ設備の物理的な増設が進んでおり、これらの設備を遠隔監視だけでなく、現場で直接監視するニーズが高まっているためです。

UPS室(無停電電源装置室)やスイッチギア設備、冷却スキッドなど、堅牢な現場用HMI(ヒューマンマシンインターフェース:人間が機械を操作・監視するための画面や装置)を必要とする設備が増加しており、これが北米市場の持続的な成長を牽引しています。

日本市場:スマート化推進でCAGR 10.66%の成長予測

日本市場もまた、予測期間中に年平均成長率(CAGR)10.66%で推移し、力強い市場拡大が期待されています。

政府が推進する「Connected Industries」構想や「令和6年度ものづくり補助金」といった施策が、IoT機能を搭載した生産設備への投資を後押ししています。2024年度のものづくり補助金では、5,777件の申請のうち2,070件のプロジェクトが採択されるなど、デジタル機器への設備投資が非常に活発です。組み込みパネルコンピュータは、こうしたスマート化された生産設備において、制御や可視化のための重要な役割を担っています。

私たちの未来を支える主要プレイヤーたち

この成長市場をリードする主な企業には、以下のような名前が挙げられます。

世界の主要プレイヤー:

  • Advantech Co., Ltd.

  • Axiomtek Co., Ltd.

  • Kontron AG

  • Dell Technologies

  • Intel Corporation

日本のトップ5プレイヤー:

  • Renesas Electronics Corporation

  • NEC Corporation

  • Hitachi Ltd.

  • Mitsubishi Electric

  • Omron Corporation

組み込みパネルコンピュータが拓く、よりスマートな社会

組み込みパネルコンピュータは、私たちの目には見えにくいところで、データセンター、工場、インフラ設備など、現代社会のあらゆる基盤を支えています。データ量の爆発的な増加やAI技術の進化に伴い、その重要性はますます高まるでしょう。

この技術の発展は、産業の効率化や自動化を加速させ、私たちの生活をより安全で快適なものへと導く鍵となります。これからも、組み込みパネルコンピュータの進化が社会にどのような変革をもたらすのか、注目していきましょう。


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