心疾患患者を取り巻く背景と食事管理の課題
日本において、心不全患者は増加の一途をたどっており、2030年には130万人を超えると推計されています。心不全による再入院率は約19.6%と高く、その一因として退院後の服薬や生活管理、特に塩分・水分管理を含む食事管理の継続が困難であることが指摘されています。
「おいしい健康」に日々寄せられる食事相談の中には、「複数の病気があって何を食べればいいか分からない」「薬を飲んでいて食べられないものがある」といった声が多数見られました。これらの声から、10年間の相談内容230件を分析したところ、「複数疾患併発による管理の難しさ」「食事管理を担う家族の負担」「退院後に生じる支援の空白」という3つの実態が浮かび上がりました。本記事では、このうち「複数疾患併発による管理の難しさ」に焦点を当てて解説します。
AI解析が示す食事管理の複雑さ
AI解析では、食事管理の複雑さの背景に大きく2つの要因があることが分かりました。
疾患共起マトリクスから見る併存疾患のパターン
心疾患患者の多くは、糖尿病、高血圧、脂質異常症、CKD(慢性腎臓病)などを併発しています。特に多い併発パターンとしては、心筋梗塞と脂質異常症、高血圧と脂質異常症、心筋梗塞と高血圧、心筋梗塞と糖尿病、心筋梗塞とCKD(慢性腎不全)などが挙げられます。これらの患者は、心疾患と高血圧の両方で減塩(1日6g以下)が求められるだけでなく、糖尿病を併発していれば糖質管理、CKDがあればカリウム制限など、複数の食事条件を同時に意識する必要があります。

薬剤と食事の矛盾
複数疾患の併発だけでなく、心疾患の治療に用いられる薬剤が食事管理をさらに難しくするケースもあります。例えば、心房細動や弁膜症などで処方される抗凝固薬「ワーファリン」は、ビタミンKの働きに影響を与えるため、納豆などの摂取を避け、ブロッコリーなどの緑黄色野菜の摂取量を毎日一定に保つ必要があります。これは、心疾患の食事療法で緑黄色野菜の摂取が推奨されることと矛盾する場合があり、「疾患の食事療法」と「薬剤による食品制限」の両方を考慮した献立作りが求められます。
患者・家族が直面する具体的な悩み
こうした複数疾患の併発や服薬による制限が重なることで、患者やその家族からは、日々の献立や食材選びに関する切実な悩みが寄せられています。
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「腎臓病、心不全、逆流性食道炎、うつ病です。腎臓病の食事療法でカリウム制限、減塩につとめています。どうしていけばよいでしょうか?」
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「心筋梗梗塞で、腎臓も悪くなりました。カリウムを摂り過ぎないようにしています。塩分、油も控えて豚牛肉も使えません。どんなメニューがいいのでしょうか?」
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「心臓弁膜症の手術後、ワーファリンを飲むことになり食事やレシピに苦労しています。ビタミンKが少ないレシピも検討いただけると助かります。」
患者・家族に求められる支援
これらの声から、以下の2種類の支援ニーズが考えられます。
心腎代謝(CKM)症候群を見据えた疾患横断型の食事支援
心疾患患者の多くが複数の疾患を併発している現状を踏まえると、単一疾患に特化した支援だけでは患者のニーズに応えきれません。心臓・腎臓・代謝が相互に関連して進行する病態を指す「CKM症候群」という概念が近年注目されており、これに合致する疾患横断型の患者サポートプログラム(PSP:Patient Support Program)の必要性が高まっています。
患者や家族の日常生活に即した支援設計
患者が直面しているのは、疾患と薬剤による複数の制限が複雑に絡み合う中で、「矛盾する制限にどう対応すればよいか」という実践の難しさです。そのため、患者や家族からは、その時々の体調や治療内容に合わせた献立の見直しや、服薬状況の変化に応じた継続的なフォローアップを求める声が上がっています。
「おいしい健康」は、10年間にわたり蓄積してきた食事相談のデータから得られた患者・家族のインサイトを活用し、より患者に寄り添ったPSPの設計・提案を支援しています。
『おいしい健康』アプリの紹介と今後の展望
「おいしい健康」は、「誰もがいつまでも、おいしく食べられるように」をコンセプトに、AI献立・栄養管理アプリ『おいしい健康』を提供しています。このアプリは、健康状態や疾患、食の好みに合わせてAIが最適な献立・レシピを提案するパーソナライズ食事管理サービスです。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」や各種診療ガイドライン、医師の食事指示に基づき、予防、ダイエット、80種類以上の疾患別の食事管理を家庭で手軽に実践できるようサポートします。
アプリやサービスに関する詳細は、以下のリンクから確認できます。
株式会社おいしい健康は、製薬企業の患者サポートプログラム(PSP)を食事・栄養面から支援するヘルスケア・スタートアップです。月間200万人が利用するアプリ「おいしい健康」と医療機関向けSaaS「Kakaris(カカリス)」を基盤に、データサイエンスに基づく食事・栄養療法(DBN)の社会実装を進めています。
今後も、製薬企業と協力しながら食と健康に関するエビデンス創出・機能拡充を進め、病気の予防や治療に関わる人々の食の問題を解決し、健康的な食生活をおいしく楽しく送ることのできる社会の実現を目指していくとのことです。
調査概要
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調査主体: 株式会社おいしい健康
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対象期間: 2016年5月〜2026年4月(10年間)
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対象データ: 心疾患関連キーワード(心筋梗塞、心不全、狭心症、弁膜症、不整脈など)に該当する、10年間で蓄積した患者・家族からの相談230件
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分析手法: Janome(日本語形態素解析エンジン)による形態素解析、共起分析、テーマ分類
本調査の限界
この分析は、「おいしい健康」アプリに自発的に投稿したユーザーに基づくものであり、一般的な心疾患患者全体を代表するものではない点に留意が必要です。また、併存疾患数は投稿内での言及に基づいており、実際の併存疾患数とは異なる可能性があります。
関連情報: 株式会社おいしい健康の事業内容