2026.08.18 業界最新情報

急成長するネットワークセキュリティ市場:AIと5Gが牽引する未来の防御戦略

デジタル社会を守る最前線:進化するネットワークセキュリティ

スマートフォンやPCが生活に不可欠な現代において、インターネットは私たちの日常を豊かにする一方で、常に新たな脅威にさらされています。個人情報から企業の機密データまで、あらゆる情報がネットワークを通じてやり取りされる今、それらを守る「ネットワークセキュリティ」の重要性は増すばかりです。ネットワークセキュリティとは、ネットワーク上を流れるデータを不正アクセスやサイバー攻撃から守るための技術や対策の総称を指します。

急成長するネットワークセキュリティ市場

SDKI Analyticsが実施した調査によると、ネットワークセキュリティ市場は今後10年間で大きく成長すると予測されています。具体的には、2025年には約329億米ドル(約4.9兆円)、2035年には約1,177億米ドル(約17.6兆円)の市場規模に達すると見込まれており、この期間における年平均成長率(CAGR)は約13.6%と予測されています。

ネットワークセキュリティ市場の調査結果を示すグラフ

この成長は、デジタル化が加速する社会において、ネットワークを安全に保つことへの需要がどれほど高まっているかを示しています。市場調査レポートの詳細は、以下のURLで確認できます。

https://www.sdki.jp/reports/network-security-market/590642425

市場を牽引する二大要因:AIとコネクテッドデバイス

ネットワークセキュリティ市場の成長を支える主な要因は二つあります。一つはAIインフラの拡大、もう一つはコネクテッド・エンドポイント(接続型端末)の急速な普及です。

AIインフラの拡大とセキュリティ要件の高度化

人工知能(AI)の技術は、大規模言語モデルや生成AIアプリケーションの分野で目覚ましい発展を遂げています。これに伴い、AIコンピューティングインフラ、つまりAIを動かすための基盤となる設備やシステムが世界中で急速に構築されています。例えば、NVIDIAのデータセンター部門の収益は、2025年度に前年比142%増の1,152億米ドルに達しました。また、Microsoftは2025年度にAI対応データセンターを世界中で構築するため、約800億米ドルを投資する計画を進めています。

このようなAIインフラの拡大は、ネットワークトラフィックの量と複雑さを増大させ、より高度なトラフィック可視化、アクセス制御、ネットワークセグメンテーション(ネットワークを論理的に分割しセキュリティを強化する技術)、そして脅威検知の必要性を高めています。これにより、高性能なネットワークにおけるセキュリティ要件が高度化し、ネットワークセキュリティソリューションへの需要を後押ししているのです。

モバイル・5Gエンドポイントの普及と攻撃対象領域の拡大

スマートフォンやIoTデバイス、エッジシステムなど、インターネットに接続される端末(コネクテッド・エンドポイント)の数は飛躍的に増加しています。国際電気通信連合(ITU)によると、2025年には世界のモバイル携帯電話契約数が92億件に達し、5G契約は世界のモバイルブロードバンド契約全体の約3分の1を占めると予測されています。

これらのデバイスがネットワークの境界を拡大することで、企業や個人が保護すべき対象は広範になり、サイバー攻撃の「攻撃対象領域(アタックサーフェス)」も増大しています。これに対応するため、ネットワークセグメンテーション、セキュアアクセス(安全な方法でネットワークに接続すること)、ID管理(ユーザーの身元を管理し適切なアクセス権を与えること)、ファイアウォール技術、そして継続的な脅威監視といった、より包括的なセキュリティ対策が求められています。

進化するセキュリティ技術と日本の取り組み

ネットワークセキュリティの分野では、新たな脅威に対抗するため、技術革新が日々進んでいます。

AIを活用した自律型セキュリティシステム

2026年5月、MicrosoftはAIを活用した新たな自律型セキュリティシステムを発表しました。このシステムは、Windowsのネットワークや認証スタック全体で16件の脆弱性(セキュリティ上の弱点)を特定し、その中には遠隔地から不正なプログラムを実行される恐れのある「リモートコード実行(RCE)」の重大な脆弱性4件も含まれていました。Microsoftの「MDASH」システムは、100以上の専門的なAIエージェントを用いて脆弱性の発見と検証を行うもので、AIがネットワークセキュリティや脆弱性管理の分野でいかに重要な役割を果たすかを示しています。

日本におけるサイバーセキュリティ産業の活性化

国内でもサイバーセキュリティの強化に向けた動きが活発化しています。2025年3月、日本の経済産業省は、国内のサイバーセキュリティ製品・サービスのエコシステム強化を目指す「サイバーセキュリティ産業の活性化に向けた戦略」を公表しました。この戦略では、政府機関による国内スタートアップ開発の有望なサイバーセキュリティ製品の試行導入、研究開発(R&D)支援の拡充、そしてセキュリティベンダーとシステムインテグレーター(SIer)との連携強化などが掲げられています。経済産業省は、国内サイバーセキュリティ産業の売上高を10年間で約0.9兆円から3兆円超へと拡大するという長期目標を策定しており、日本のサイバーセキュリティ対策が大きく前進することが期待されます。

経営層の意思決定に役立つ戦略的洞察を得るため、ネットワークセキュリティ市場調査レポートの試読版も提供されています。
https://www.sdki.jp/trial-reading-request-590642425

セキュリティの要、次世代ファイアウォール(NGFW)

ネットワークセキュリティ対策の中核を担うのが「ファイアウォール」です。これは、ネットワークの出入りを監視し、不正な通信を遮断する壁のようなシステムです。特に注目されているのが「次世代ファイアウォール(NGFW)」で、2035年までに市場シェアの約65%を占める主要なセグメントとなると予測されています。

NGFWソリューションは、従来のファイアウォール機能の枠を超え、ディープパケットインスペクション(DPI:ネットワーク上のデータの中身を詳細に検査する技術)、侵入防止(IPS:不正な侵入をリアルタイムで検知しブロックするシステム)、アプリケーション認識(ネットワークトラフィックがどのアプリケーションによって生成されたかを識別する機能)、そして高度なトラフィック可視化といった機能を提供します。

ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の脅威や、複数のコンピューターから同時に攻撃を仕掛ける分散型攻撃の増加、そして攻撃者の高度化に伴い、企業によるNGFW技術の導入が進んでいます。世界経済フォーラムのサイバーセキュリティ評価によると、ランサムウェアによるインシデントは世界的に増加傾向にあり、次世代の境界型セキュリティに対する需要をさらに高めています。

地域別に見る市場の動向

ネットワークセキュリティ市場は、地域によって異なる特徴を示しています。

北米が市場を主導

SDKI Analyticsの分析によると、北米は世界の収益の34%以上を占め、引き続き最大の市場シェアを維持すると予測されています。この背景には、高度なサイバーセキュリティ技術の早期導入、大規模なクラウドインフラ、成熟したサイバーセキュリティエコシステム、そして企業の支出拡大といった要因があります。同地域の組織は、次世代ファイアウォール、ゼロトラストセキュリティフレームワーク(「何も信頼しない」を前提に、すべてのアクセスを検証するセキュリティモデル)、マネージド検知サービス(専門家がセキュリティ監視・検知を行うサービス)、AIを活用したサイバーセキュリティツールへの投資を積極的に続けています。

連邦捜査局(FBI)のインターネット犯罪苦情センター(IC3)の報告によると、2024年にはフィッシング(偽のウェブサイトやメールで個人情報をだまし取る詐欺)やなりすましに関する苦情が約193,407件寄せられ、フィッシングは同地域で最も頻繁に報告されるサイバー犯罪の一つとなっています。サイバー脅威の増大に伴い、各組織は重要インフラ、クラウド環境、企業ネットワーク全体にわたるサイバーセキュリティへの投資を強化しています。

アジア太平洋地域と日本の成長

アジア太平洋地域は、予測期間中に最も高い成長率を記録すると見込まれています。特に日本のネットワークセキュリティ市場は、サイバー攻撃の増加、急速なクラウド移行、5Gの導入、デジタルトランスフォーメーション(DX:デジタル技術を活用してビジネスや生活を変革すること)の推進を背景に、予測期間中に年平均成長率(CAGR)約13.3%で成長すると予測されています。

情報通信研究機構(NICT)によると、2025年のサイバー攻撃関連の通信量は約7,010億パケットに達し、観測開始以来最多を記録しました。こうした状況を受け、日本の企業や政府機関の間では、高度なネットワーク監視、AIを活用した脅威検知、クラウドセキュリティソリューションに対する需要が高まっています。

ネットワークセキュリティ市場の主要企業

世界のネットワークセキュリティ市場を牽引する主要企業には、以下の企業が挙げられます。

  • Palo Alto Networks

  • Cisco Systems

  • Fortinet

  • CrowdStrike

  • Check Point Software

また、日本市場における上位5社は以下の通りです。

  • トレンドマイクロ

  • NEC Corporation

  • NTT Security Holdings

  • Fujitsu Limited

  • Hitachi Ltd.

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関連する市場調査レポートも参照することで、より広範なサイバーセキュリティの動向を把握できます。

まとめ:安全なデジタル社会のために

ネットワークセキュリティは、もはや一部の専門家や大企業だけが考えるべき問題ではありません。AIや5Gの進化がもたらす利便性の裏側には、常に新たなセキュリティリスクが潜んでいます。個人レベルでは、OSやソフトウェアのアップデートをこまめに行い、不審なメールやリンクに注意するといった基本的な対策が不可欠です。企業にとっては、次世代ファイアウォールのような最新技術の導入や、従業員のセキュリティ意識向上教育が、事業継続の生命線となるでしょう。

デジタル社会がさらに発展していく中で、私たち一人ひとりがセキュリティ意識を高め、適切な対策を講じることが、安全で豊かな未来を築くための鍵となります。最新のセキュリティ技術を理解し活用することで、これまでセキュリティ対策に尻込みしていた方も、きっと安心してデジタルサービスを「使ってみたい」と感じられるようになるはずです。

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