2026.02.25 業界最新情報

触れる感覚が伝わるロボットを5Gで遠隔操作!世界初の低遅延技術が拓く新たな可能性

5Gがロボット遠隔操作の課題を解決

近年、様々な分野でロボットの活用が期待されていますが、遠隔地からロボットを操作する際には、通信の「遅延」が大きな課題となります。特に、医療現場での精密な手術や災害現場での危険な作業など、繊細な力加減や触覚が求められる場面では、わずかな遅延が操作ミスにつながる可能性があります。

株式会社NTTドコモと慶應義塾大学ハプティクス研究センターは、この課題を解決するため、商用5Gとロボティクス技術を組み合わせた実証実験に成功しました。この成果は、遠隔操作ロボットの性能を飛躍的に向上させ、社会実装を加速させるものとして注目されています。

世界初の技術「Conpd Grant」と「リアルハプティクス®」

今回の実証実験では、以下の2つの先進技術が重要な役割を果たしました。

  • リアルハプティクス®:慶應義塾大学の大西公平特任教授が発明した技術で、現実の物体や周辺環境との接触情報を双方向で伝送し、人間の力加減をロボット上で再現します。これにより、操作者は遠隔地のロボットが物に触れた際の手応えを、まるで自分の手で触っているかのように感じることができます。

  • 低遅延スライシング「Conpd Grant」:5Gのネットワークは、「ネットワークスライシング」という技術によって、用途に応じて仮想的に分割し、最適なネットワークを提供できます。「低遅延スライシング」はその中でも特に遅延を抑えることに特化した技術です。「Conpd Grant」は、この低遅延スライシングの一つで、基地局が特定の端末(今回の場合はロボット)に対し、あらかじめ通信リソースを優先的に割り当てておくスケジューリング方式を指します。これにより、モバイルネットワークの混雑状況に左右されず、無線区間における通信遅延やその変動を大幅に抑制することが可能になります。

Conpd Grantによる遅延抑制の仕組み

通常のモバイルデータ通信では、端末がデータを送る前に基地局にリソースの割り当てを要求し、その応答を待つ「スケジューリング遅延」が発生します。しかし、Conpd Grantを適用することで、このスケジューリング遅延の発生が抑制され、通信経路全体の遅延と遅延の変動が低減します。

実証実験で確認された圧倒的な性能向上

今回の実証実験では、ドコモの商用5G SA(スタンドアローン)を利用し、操作ロボット(リーダー)と遠隔ロボット(フォロワー)を接続。さらに、ドコモが開発を進めるロボット用独自プラットフォーム「Bilateral Edge Platform™」を実装したdocomo MEC®上の仮想サーバと連携させました。

ロボット制御パケットの流れ

実験では、ハンド型のロボットを用いて硬い木片を把持し、力を変動させながら運搬するというタスクを、Conpd Grantを適用した場合と適用しない通常の5G SAの場合で比較しました。

実験の様子

その結果、Conpd Grantを適用した5G SAでは、平均通信遅延と遅延の変動(標準偏差)が大幅に低下し、リアルハプティクスロボットの実用的な遠隔操作に求められる通信遅延要件を達成しました。これにより、以下の性能向上が確認されています。

  • 力触覚再現率の向上:力触覚再現率は、一方のロボットにかかる力をもう一方のロボットがどれだけ再現できているかを示す指標です。Conpd Grant適用時には、この指標値が40%(24ポイント)向上し、より高い精度の手応えのフィードバックが得られることが確認されました。

力触覚再現率の比較

  • ロボット操作の滑らかさの改善:ロボットの動作の滑らかさを示す指標である無次元Jerk Costでは、Conpd Grant適用時に指標値が59%低下しました。これは、ロボットがよりガタつきなく滑らかに操作できるようになったことを意味します。

ロボット操作の滑らかさの比較

遠隔操作ロボットが拓く未来

今回の実証成功により、これまで難しかった繊細かつ高度なロボットの無線遠隔操作が、通信の混雑の影響を受けにくい形で安定的に実行できるようになります。この技術は、以下のような分野で大きな可能性を秘めています。

  • 医療分野:遠隔地からの精密な手術支援。医師が離れた場所からロボットを操作し、患者の状態を触覚で感じながら治療を行うことが可能になるでしょう。

  • 建設・インフラ点検:危険な高所作業や劣悪な環境下でのロボットによる作業。熟練作業員が安全な場所から、まるで現場にいるかのような感覚で重機や検査ロボットを操作できるようになるかもしれません。

  • 災害救助:被災地や立ち入りが困難な場所での救助活動。ロボットが瓦礫の中を進み、救助対象を繊細に探索・救出するといった場面で活躍が期待されます。

NTTドコモと慶應義塾大学は、今後も高度なロボットの無線遠隔操作の早期実用化に向けた技術開発と検証を継続していくとのことです。この取り組みは、2026年3月2日から5日にスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress Barcelona 2026」のNTTグループブースでも展示される予定です。

参考:

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