EMCシールドとは?私たちの生活を支える見えない技術
スマートフォンやPC、スマート家電など、私たちの生活は数多くの電子機器に囲まれています。これらの機器がスムーズに、そして安全に動作するために欠かせないのが「電磁両立性(EMC)シールド」という技術です。
EMCシールドは、電子機器から発生する不要な電磁波(電磁妨害、EMI)が他の機器に悪影響を与えたり、逆に外部からの電磁波によって機器が誤動作したりするのを防ぐための保護技術です。まるで、機器を電磁波のノイズから守る「見えないバリア」のような役割を果たしています。この技術があるからこそ、私たちはWi-FiやBluetooth、5Gといった複数の無線通信を搭載したデバイスを快適に利用できているのです。
日本のEMCシールド市場が急速に拡大中
Research Nester Inc.の調査によると、日本のEMCシールド市場は著しい成長を遂げています。2025年には3億9,200万米ドルを超えると見込まれていましたが、2035年末までには8億2,560万米ドルに達すると予測されています。これは、2026年から2035年までの予測期間中、年平均成長率(CAGR)7.7%で拡大することを示しています。

この成長の背景には、電子・電気機器の急速な普及、高性能な民生用電子機器への需要拡大、そして電磁妨害(EMI)やEMCに関する厳しい規制があります。さらに、産業オートメーションやロボット技術の導入拡大、スマートファクトリー・インフラの整備も、市場の継続的な成長を後押ししています。
進化するEMCシールドの技術と応用事例
EMCシールドの分野では、新たな技術革新が次々と生まれています。
2022年10月には、パナソニックが宇宙航空研究開発機構(JAXA)や大学と共同で、航空宇宙・電子機器用途に向けた超軽量EMCシールド材の開発を開始しました。この新素材は、アルミニウムの約270分の1という軽さでありながら、同等の電磁シールド性能を発揮するといいます。これにより、宇宙開発や航空分野での電子機器の軽量化に大きく貢献することが期待されます。
また、2026年7月には、Electroninks社とSIIX社が、日本およびグローバル市場における電子機器向けのアディティブ(積層造形)EMIシールド・ソリューションを共同開発するため、提携を拡大しました。これは、試作試験の実施や顧客による最適なコーティング工程の開発支援を行うもので、より効率的で柔軟なEMCシールドソリューションの提供につながるでしょう。
さらに、2025年5月には、辰田電線の透明電磁波シールドフィルムが、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のワイヤレス給電展示に採用されました。このフィルムは高い透明性と耐候性を保ちながら、マイクロ波の漏洩を防ぐ役割を果たし、未来のテクノロジーを支える一例となりました。
私たちの身近な電子機器で活躍するEMCシールド
EMCシールド市場において、特に注目されているのが「民生用電子機器」分野です。このサブセグメントは、予測期間中に36.5%という最大の市場シェアを占めると見込まれています。
現代のスマートフォン、ウェアラブル端末、ノートパソコン、スマート家電には、Bluetooth、Wi-Fi、5G、NFCなどの高周波機能が数多く搭載されています。これらの機器は小型化され、内部の部品実装密度も高まっているため、電磁干渉や信号劣化のリスクも増大します。EMCシールドは、こうした状況下で機器が安定して機能するために不可欠な存在です。
日本電子情報技術産業協会(JEITA)の発表によると、2026年1月の日本の民生用電子機器の輸入額は前年同月比4.1%増の844億7,000万円に達しました。このデータは、EMCシールドにとって有望な市場機会が広がっていることを示唆しています。
東京が牽引するEMCシールド需要
地域別に見ると、東京が2035年末までに日本の電磁両立性(EMC)シールド市場において有望な成長機会をもたらすと予測されています。
東京は、データセンター、5Gネットワーク、スマートシティ・システム、コネクテッド公共サービスなど、広範なデジタルインフラの整備が進んでいます。これらのシステムの高密度化や動作周波数の上昇に伴い、信号の完全性(シグナルインテグリティ)と動作の信頼性を維持するためには、電磁干渉(EMI)を適切に管理することが極めて重要です。
2025年9月に公表された政府データでは、東京が5Gインフラの拡大や携帯電話基地局の強化を進め、「コネクテッド・トーキョー」の実現を目指していることが示されています。また、2026年3月時点では、医療機関による電子カルテ(EMR)システムやその他のデジタル技術の導入支援を通じて、医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しており、ここでもEMCシールドの需要が高まっています。
まとめ
EMCシールドは、私たちのデジタルライフを影で支える非常に重要な技術です。スマートフォンやPCが快適に動作するだけでなく、医療や産業、さらにはスマートシティといった広範な分野での技術革新を可能にしています。今後も、より高性能で、より軽量なEMCシールド技術の進化が、私たちの未来をさらに豊かにしてくれることでしょう。
詳細情報
Research Nesterによる「日本の電磁両立性(EMC)シールド市場」調査レポートの詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。