AIとIoTの進化を支えるMECの重要性
現代社会では、生成AIやフィジカルAIの急速な普及により、情報をリアルタイムで処理し、瞬時に判断を下すニーズが飛躍的に高まっています。例えば、自動運転、スマート工場、遠隔医療など、さまざまな分野でその要求は増すばかりです。
このような状況に対応するため、遠く離れたクラウドだけでなく、利用者のデバイスに近い場所で情報処理を行う「MEC(Multi-access Edge Computing)」という技術が注目されています。MECは、通信の遅延を極限まで抑え、さらに閉域網内での通信やデータ流通を通じて高いセキュリティとデータガバナンスを実現できるという特長を持っています。
GPUリソースを「オンデマンド」で利用可能に
IoTの活用が広がる産業分野では、情報処理の要求が日々増大し、その変動性も大きくなっています。特にAI推論や3Dレンダリングといった処理には、高性能なGPU(Graphics Processing Unit)が必要ですが、これらのコンピューティングリソースは高価であり、利用に偏りがあるという課題がありました。常に占有する形では効率的な運用が難しいため、「必要な時に、必要な分だけ」GPUなどのコンピューティングリソースを柔軟に利用できるオンデマンド型の運用モデルへのニーズが高まっていたのです。
NTTドコモビジネス、docomo MEC®で実証実験に成功
NTTドコモビジネスは、このようなニーズに応えるべく、モバイルネットワーク内に配置されたMECと、MECへのダイレクトアクセスを可能にする回線サービスを組み合わせたdocomo MEC®において、GPUなどのコンピューティングリソースをオンデマンドで供給する実証実験に成功しました。これにより、利用者は必要なタイミングで、必要な量のMECコンピューティングリソースを利用できる仕組みが実現可能となります。
この実証実験では、通信端末からMECまでのネットワーク、そしてMEC上にあるGPUなどのコンピューティングリソースを動的に割り当てるアーキテクチャを構築。オンデマンドでのリソース供給と、最寄りのMECへの自動ネットワーク接続が実現できることを検証しました。docomo MEC®上で、アプリケーション実行環境の柔軟な配置・制御基盤、コンピューティングリソースの動的割り当て・制御コントローラー、そして端末の近くのMEC拠点に自動接続するネットワーク制御機能を一体的に実装することで、オンデマンドなコンピューティングリソース供給に成功したのです。
実証実験のイメージ

高負荷・同時接続・短期間利用という条件下での検証のため、実証ユースケースとして東海と東北のイベント会場で3Dコンテンツ配信を題材とした検証が行われました。ドコモが開発した「MetaMe®」や「GT6551」といった高負荷な3Dレンダリングを伴うアプリケーションを、東海と東北のMEC上で動作させ、イベント開催地に一番近いMECへの通信により、アプリケーションへGPUなどのコンピューティングリソースが自動割り当て・増減できるかを確認しました。
その結果、イベント時のオンデマンドなGPU増減に伴うコンピューティングリソースの動的割り当て、ならびにイベント開催地の場所に応じた最寄りのMEC基盤への自動接続が可能であることが確認されました。これにより、例えばeスポーツイベントで急にアクセスが集中しても、遅延なく快適な体験を提供できるようになるでしょう。
東北のイベント会場での本実証の様子

今後の展開:セキュリティとフィジカルAIへの応用
今回の実証実験の成果をもとに、NTTドコモビジネスは、セキュリティ機能を標準搭載したIoT向けNaaS(Network as a Service)である「docomo business SIGN™」の「Advanced」メニューにおけるMECサーバー基盤のさらなる高度化を進め、MECとGPUaaSを連携させたサービスの開発を予定しています。
具体的な適用分野としては、警備システム、ドローン、建設など、機密性の高い入力データを扱い、セキュアな閉域環境で完結するAI推論処理が求められる分野が想定されています。
さらに、フィジカルAI領域への展開も見据え、パートナー企業との共創によるユースケース創出を加速していくとのことです。NTTドコモビジネスは、企業と地域が持続的に成長できる自律・分散・協調型社会を支える「産業・地域DXのプラットフォーマー」として、新たな価値を生み出し、豊かな社会の実現をめざしています。

専門用語解説
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MEC(Multi-access Edge Computing)
従来のクラウドサービスとは異なり、利用者の端末に近い場所にサーバーを設置することで、通信の遅延を大幅に低減する「エッジコンピューティング」の一種です。特にモバイル端末やIoT機器に特化した技術として開発されました。 -
AI推論
AIが事前に学習した知識やパターンを用いて、新しいデータ(画像、音声、テキストなど)に対して分析を行い、予測、分類、判断などの結果を導き出す一連の処理のことです。 -
3Dレンダリング
コンピュータ上で作成した3Dモデル(形状データ)に、色、質感、光、影などの情報を加えて、写真のようにリアルな2Dの画像や動画として出力するプロセスです。 -
GPU(Graphics Processing Unit)
画像処理に特化した半導体チップですが、並列処理能力が高いため、AIの学習や推論、3Dレンダリングなど、大量の計算を同時に行う必要がある処理に広く活用されています。 -
NaaS(Network as a Service)
ネットワーク機能をサービスとして提供するモデルです。利用者はネットワーク機器を所有・管理することなく、必要なネットワーク機能をオンデマンドで利用できます。
関連リンク
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NTTドコモビジネスについて
<https://www.ntt.com/about-us/nttdocomobusiness.html> -
2026年3月25日報道発表:AI時代のIoT拡大に対応した「docomo business SIGN™」のセキュリティ・コネクティビティ機能を強化
<https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2026/0325_3.html> -
「docomo business SIGN™」サービスサイト
<https://www.ntt.com/business/lp/iot/sign.html> -
「docomo MEC®」サービスサイト
<https://www.mec.docomo.ne.jp/>